甲状腺ホルモンに対する反応が生まれつき悪く、それを補うために過剰な量の甲状腺ホルモンが作られる病気で、「レフェトフ症候群」とも呼ばれます。
遺伝性の病気で、1/2の確率で子供に遺伝しますが(常染色体顕性遺伝)、両親にこの病気がなかった場合でも、突然変異により発症することがあります。
4万人に1人くらいの頻度で認められます。
橋本病(慢性甲状腺炎)やバセドウ病を合併することもあります。
原因
甲状腺ホルモンの作用は、細胞の中にある甲状腺ホルモン受容体と結合することで発揮されます。
甲状腺ホルモン受容体には「α型」と「β型」があり、甲状腺ホルモン不応症のほとんどが「β型」の遺伝子異常によって発症します。
症状
自覚症状がないことが多いですが、甲状腺が腫れ、脈が速くなる人もいます。
心臓は甲状腺ホルモンに対する反応性が比較的保たれていることが多く、過剰な量の甲状腺ホルモンの影響を受けて脈が速くなります。
また、「落ち着きがない」「集中力がない」といった注意欠陥多動性障害(ADHD)を発症することもあります。
甲状腺ホルモンに対する反応が極端に悪い場合は、先天性甲状腺機能低下症と同じように、低身長や知能低下をきたします。
女性の患者さんが、遺伝子異常を持たない赤ちゃんを妊娠した場合、流産したり、小さな赤ちゃんが産まれることがあります。
検査と診断
通常であれば、血液中の甲状腺ホルモンが増えると、脳下垂体におけるTSHの分泌量が減ります(ネガティブフィードバック機構)。
一方、甲状腺ホルモン不応症では、血液中の甲状腺ホルモンが過剰なのにもかかわらず、脳内では甲状腺ホルモンが不足していると誤認して、TSHを作ろうとします。
したがって、血液検査では「甲状腺ホルモンが高値にもかかわらず、TSHは正常値~軽度高値」を示します。
この状態を「不適切TSH分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of TSH:SITSH)」といいます。
脳の下垂体腫瘍(TSH産生腫瘍)もSITSHをきたすため、頭部MRI検査により鑑別診断を行います。
下垂体に異常がなければ、遺伝子検査を行って診断を確定します。
治療
多くの場合、治療をしなくても健康な人と同じように日常生活を送ることができます。
脈が速い場合は、心房細動 という不整脈を起こすおそれがあるため、脈拍を抑える薬を服用します。
甲状腺ホルモンに対する反応が極端に悪く、甲状腺機能低下症を示す場合、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を服用します。
難病医療費助成制度について
甲状腺ホルモン不応症は「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」で指定された「指定難病」です。
「日常生活や社会生活に支障があると医学的に判断された場合」に、「指定医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護事業者)」で受けた医療について、医療費の一部が助成されます。
医療費助成を受けるためには、「医療受給者証」が必要です。
診断書(臨床調査個人票)を「難病指定医」が作成し、診断書と必要書類を合わせて、都道府県・指定都市の窓口に医療費助成の申請します。
書類審査を受け、認定された方には「医療受給者証」が発行されます。指定医療機関を受診の際、「医療受給者証」を提示すると助成が受けられます。
詳しくは、難病情報センターのホームページをご覧ください。