薬剤の副作用により甲状腺機能低下症や甲状腺中毒症をきたすことがあります。
薬剤の副作用により甲状腺機能低下症をきたす機序
下記のようにさまざまな機序があります。
①脳下垂体での甲状腺刺激ホルモン (TSH)の分泌を抑制する
②甲状腺でのホルモンの産生・分泌を抑制する
③甲状腺ホルモンの代謝を促進する
薬剤の作用によって甲状腺ホルモンの代謝が進んだ分、甲状腺ホルモンは少なくなります。通常であれば、減少した甲状腺ホルモンを補うだけの能力は備わっていますが、橋本病などで甲状腺ホルモンを産生する能力が低下している場合は、減少した甲状腺ホルモンを補えきれずに甲状腺機能低下症をきたします。
④甲状腺ホルモンと結合するタンパク質を増やす
甲状腺ホルモンと結合するタンパク質が増えると、このタンパク質から離れて臓器に作用するホルモン(FT4, FT3)が少なくなり、甲状腺機能低下症をきたします。橋本病などで甲状腺ホルモンを産生する能力が低下している場合に起こります。
⑤結合タンパクと甲状腺ホルモンの結合を阻害する
⑥T4からT3への転換を阻害する
⑦腸管での甲状腺ホルモンの吸収を阻害する
薬剤の副作用により甲状腺中毒症をきたす機序
下記2つの機序があります。
①甲状腺機能亢進症
薬剤の作用により、甲状腺の働きが活発になりすぎて甲状腺ホルモンが過剰に作られます。
②破壊性甲状腺中毒症
薬剤の作用で甲状腺が破壊されて、甲状腺に蓄えられていたホルモンが血液中に漏れ出ることで、甲状腺ホルモンが過剰になります。
これらの薬剤による甲状腺機能異常症の多くは、服用を中止すれば改善しますが、中止ができない場合や、服用を継続した方がよいと判断される場合には、原因となる薬剤を服用しながら甲状腺機能異常に対する治療を行います。