抗甲状腺薬は、甲状腺でホルモンが作られないようにして、血液中の甲状腺ホルモンの量を減らします。
「チアマゾール(商品名:メルカゾール)」と「プロピルチオウラシル(商品名:プロパジール、チウラジール)」の2種類があります。
「チアマゾール」が使用されることが多いですが、妊娠初期に使うことができません。
副作用や妊娠初期のためにチアマゾールが服用できない場合は、「プロピルチオウラシル」や「ヨウ化カリウム」を使用します。
抗甲状腺薬を服薬し始めて、早くて2~3週間、遅くて3~4か月で甲状腺ホルモンは正常となり、症状は改善します。
その後、少しずつ薬の量を減らし、少量の薬で甲状腺ホルモンが正常な状態が半年以上続けば、薬の中止が検討されます。
2~3年で約半数の方が薬をやめられていますが、薬が中止できるまでの期間は数か月~10年以上と、人によってさまざまです。
薬がやめられても再発することは少なくないので、当初は3か月毎通院して血液検査を受けることになります。
状態が安定していれば少しずつ間隔をあけて、最終的には1年に1回程度の通院で済むようになります。
副作用への対応
抗甲状腺薬の副作用は、薬を服用し始めて2~3か月以内に現れやすいので、服用開始から少なくとも2か月間は、原則2週間に1回、その後は1~3か月に1回程度、通院して血液検査や尿検査を受け、副作用の有無を確認します。
白血球減少症、好中球減少症
発症する頻度は500~1000人に1人とわずかですが、生命にかかわる重大な副作用です。
血液の白血球・好中球が少なくなり、細菌感染への抵抗力が低下し、発熱や咽頭炎を生じます。
「38℃以上の発熱」「のどの痛み」があれば、すぐに薬の服用を中止して医療機関を受診し、血液検査で「白血球と好中球の数」を調べてもらう必要があります。
好中球の数が減っていれば、入院治療が必要になる場合があります。
肝機能障害
軽度の肝機能障害は一時的であることが多く、抗甲状腺薬の服用を継続しながら経過をみます。
強い肝機能障害が起こった場合は、抗甲状腺薬の服用を中止して、ほかの治療法に切り替えます。
「眼球や皮膚が黄色くなる(黄疸)」「尿が茶褐色になる」「だるい」といった症状が出れば、重篤な肝機能障害であるおそれがあるため、薬の服用を中止して早めに受診する必要があります。
かゆみ、じんましん
軽度の場合は、抗アレルギー薬を服用しながら抗甲状腺薬の服用を継続します。
抗アレルギー薬を服用しても治まらない場合や、症状が強い場合は、抗甲状腺薬の種類を変更したり、ほかの治療法に切り替えます。
その他
まれに、筋肉痛、関節痛、血尿などがでることがあります。
いずれの場合も、医師に相談してください。
抗甲状腺薬が効いてくると、「体重が増える」「筋肉がつりやすくなる」「髪の毛が抜けやすくなる」ことがあります。
いずれも、過剰であった甲状腺ホルモンが減ってきたときに現れる症状です。