これまで甲状腺に異常がなかった人でも、出産後に甲状腺機能の異常が起こることがあり、出産後女性の5~10%程度に認められ、下記の5つに分けられます。
「産後の肥立ちが悪い」とか「産後うつ病」などの不調には、出産後の甲状腺機能異常が原因と考えられる場合が少なからずあります。
母体にとって胎児は父親の遺伝子を持つ”異物”であり、胎児を異物とみなして攻撃しないように、妊娠中は母体の免疫系が抑制されますが、出産後はその反動で免疫系が亢進するために、甲状腺機能異常が引き起こされると考えられています。
したがって、甲状腺に対する抗体が陽性の人(甲状腺に対して免疫反応が起きている人)は出産後甲状腺機能異常症を起こしやすく、橋本病の人やバセドウ病の治療歴がある人は、出産後に甲状腺機能検査を受けることが望ましいです。
出産後の甲状腺ホルモンについて
出産後に甲状腺ホルモンが上昇する場合、「③ 破壊性甲状腺炎(出産後甲状腺炎)」は産後2~4か月後に起こることが多く、「① バセドウ病」は産後4~8か月後に発症することが多いため、産後2か月目と6か月目に検査を行います。
出産後に甲状腺ホルモンが低下する場合、ほとんどが一過性であり、自然に甲状腺機能は正常に回復しますが(上の図の③と④)、長期的には20~30%の人が永続性の甲状腺機能低下症に進展します。
したがって、出産後に甲状腺機能低下症を発症した人は、甲状腺機能が正常に回復した後も、1年に1回程度の定期検査が必要になります。